2016-10-26

緩やかな民主主義(Liquid Democracy): 21世紀における本当の民主主義

翻訳元: https://medium.com/@DomSchiener/liquid-democracy-true-democracy-for-the-21st-century-7c66f5e53b6f
著者:Dominik Schiener(@DomSchiener)
翻訳者:jasagiri (@jasagiri)
翻訳記事のライセンス:CC-BY-SA 4.0

緩やかな民主主義(Liquid Democracy): 21世紀における本当の民主主義

緩やかな民主主義は、間接民主主義のサブセットで、大規模なコミュニティで集団意思決定するための強力な投票モデルです。緩やかな民主主義は直接民主主義と議会制民主主義の利点の組み合わせで、問題に直接投票する有権者を支援したり、信頼された当事者に投票権を委任したりするための真に民主的な投票システムを作成します。

ドメイン固有の知識を持つ委任者を通じて、意思決定の結果により良い影響を与える事ができ、国を全体的により良く管理する事につながります。この事から、緩やかな民主主義は自然と能力主義に発展するので、 決定は問題をよく知っており特定の知識や必要な経験を持っている人により行われます。

全体的に、緩やかな民主主義は仮想コミュニティだけでなく、地域コミュニティ全体や政府の意思決定の基礎となり多くの可能性を持っています。このブログ記事では緩やかな民主主義がどのような利点を参加者に提供するのか概要を記します。 関連のブログ記事は間もなく投稿されるでしょう。

現在の民主主義では何が問題となっているのでしょう?

民主主義には多くの異なった形態がありますが、現在使われているのは、直接民主主義と議会制民主主義(とそれぞれのハイブリッド)の2つだけです。したがって、別の形態の説明をしましょう。

直接民主主義: 有権者が直接、国の意思決定に関与しています。有権者は継続的に問題に投票する事によって意見を表明します。直接民主主義は、説明責任と平等性について市民に完全な制御を提供します。残念な事に、直接民主主義は、コミュニティの成長に合わせて増え続ける問題リストに有権者の注意が行き届かず、合理的無知と公民権剥奪を主な理由としてスケールしません。つまり、時間や欲求や専門知識を持っていない有権者にすべての問題が通知され、単に非現実的になります。これはコミュニティ内の有権者にとっては低い全体的な満足度と低投票率につながります。純粋な形態での直接民主主義は単により大きなコミュニティには適していません。

議会制民主主義: 最も広く使われている民主主義の形態で、適切な意思決定を行うため、代表に投票することで自分の意思表示を行うことを含みます。代表は通常、 コミュニティの関心を表現した政府機関(例えば議会)といった(よく言えば)ドメインの専門家がなります。議会制民主主義はうまくスケールしますが、市民に最高の利益を提供することには失敗します。議会制民主主義には多くの問題がありますが、主に3つに要約されます。:

まず第一に、市民は1つの思想的見解や関心を共有することは無く、候補者の限定された集合の代表者に投票することに限られます。時の有権者の大半は、自らの個人的な好みを諦め、代わりに選出された最高の展望を持つ候補者に投票することを余儀無くされます。これは具体的には少数意見を排除する特徴があり、彼らの政府内部での視点や代理能力を失う特徴があります。加えて、これは、今の若い世代 [2]が政治にとても無関心である主な理由の一つです。もしあなたが若く、誰もあなたの意見を共有していない場合、抗議する唯一の選択肢は投票しないことです。2014年の選挙では米国の若者の投票の20%のみがこの強力な兆しです。
第二に、代表者はオフィスにいる任期中のみ行動に責任があります。選挙期間中に行われた約束が果たされなければならいことは無く約束のほどんどは有権者を欺く餌以外の何物でもありません。これは「選挙サイクルの政治」につながり、選出された代表者は、(ほとんど意味にない)コミュニティの好みで新しい提案を導入したり、高価な「Wahlgeschenke」(選挙前のプレゼント)を配ったり、自分の権限のために選挙前に有権者を説得しようとします。
そして最後に、議会制民主主義は権力が集中するため、汚職につながります。米国について云えば、寡頭政治と見られ、議会制民主主義は、汚職と利益相反のための肥沃な大地であることの十分な証明です。有権者に向けての責任感も無く、説明責任も無く、地域住民の最善の利益で行動するよりも投票者の利益のために働くことが容易になります。
直接/議会制民主主義のこれらの明らかな欠陥とは別に、あまり目立たないですが、選挙や現在使われている利用可能なテクノロジーを持たない完全に時代遅れな投票方法という事実上の欠陥があります。有権者が物理的に遠いブースに行く必要があり紙の投票用紙に記入する代わりに、インターネットを経由することで安全かつ便利に投票できるようにしています[1]。これは、単に投票に行くという骨を折る有権者に不要な負担をかけます。

皮肉なことに、これは民主主義が正に防止しようとしていることです。皆の意見数は集団意思決定のプロセスに含まれるべきです。しかし、投票障壁はハプニングからまだ現在有効に防止されています。(訳注:よくわからない。 But the voting barriers that are still standing today are preventing this from happening.)

緩やかな民主主義とは?

緩やかな民主主義とは、有権者が完全に判断を制御できる集団的意思決定のための新しい形態です。有権者は問題に直接投票できるだけで無く、自分の代わりに委任者(つまり代表者)に議決権を委任できます。委任はドメイン固有に可能で、有権者が異なるドメインの異なる専門家に自らの議決権を委任できることを意味します。

これは直接民主主義とは対照的で、参加者はすべての問題に個人的に投票する必要があり、そして議会制民主主義とは対照的に、参加者は特定の選挙サイクルで一度代表者に投票する以上のことに気を配る必要はありません。

以下の図は3種類の投票システムの違いを比較しています(質の悪い図で申し訳ないが、そのうちいい感じにするよ)。


<図:翻訳元参照>

直接民主主義モデルでは、すべての有権者は問題に直接投票します。議会制民主主義モデルでは、有権者は最初に委任者に投票し、当選者が次の代表者を選出します。この図から読み取れる興味深い点はもちろん緩やかな民主主義モデルです。ここで有権者はどちらかの問題に直接投票することができたり(左右の境界線上の2つの独立した有権者のように)、 問題についての詳細な専門知識を持つ代表者に自らの投票を委任することができたり、単純に最新情報に更新したりします(訳注:よくわからない。投票し直しのことかな? or simply more time to stay informed.)。

委任は信頼の証です。有権者は特定の決定を表明する人を信頼し委任します(訳注:よくわからない。A voter trusts a delegate to represent her on certain decisions.)。もしこの信頼が崩れると(例えば、イデオロギーの違いが増えたり、委任者の汚職によって)有権者は単に委任を取り消し、個人的や他の誰かに委任して投票できます。後で見るように、暫定信頼(provisional trust)という概念は委任者の義理や説明責任を作る上で重要です。

緩やかな民主主義でとても重要な要素は 他動性(transitivity)です。委任は一直飛びには起こらず、完全に他動的です。これは委任者であっても、すべての有権者の鎖(自身に投票を委任した人達)がリンクされた状態で他の代表者に委任できるという意味です。この他動性が、少ない知識や洞察力を持った人の特定の問題を他の専門家を信頼して委任できることを保証します。(訳注:雰囲気意訳 This transitivity ensures that experts can delegate the trust they’ve accumulated to other delegates on certain issues on which they have less knowledge and insight about.)

緩やかな民主主義と委任民主主義との大きな違いは、代理投票の代わりの推薦投票(vote recommendation)があります。 (thanks to Josef Davies-Coates for pointing that out). Sayke が緩やかな民主主義の original paper で指摘しています、「“皆、手持ちの問題にどのように答えるか決める前に何か推薦された答えを参照する必要が有ります。代理投票ではこれを行うことはできません!代理投票では代理者が権力(皆の意見を保つという回答提案)を持つことになるのです。」

上記の図では、ドメイン固有の委任(domain-specific delegation)が欠落しています。有権者は単に委任投票するだけでなく、委任はドメイン固有の問題の有権者の意見を委任投票する様々な委任者を作ります。このようなシステムを通して、専門家は積極的に問題の結果に影響を与えることができ、全体的に良い結果につながります。

問題の分類は決定するコミュニティ全体の責任ですが、政府内部の意思決定のための非常に単純な分類は次のようになります: 財政政策、金融政策、環境・気候政策。

別の例を提供するために、内部の意思決定に緩やかな民主主義を利用している政党を見てみましょう。このようなコミュニティにとって多くの意味あるカテゴリは次のようになります。: 財政、マーケティング&アウトリーチ、政治の問題や管理決定。決定には4つのカテゴリーに分類される必要が有ります。政党のメンバーは、これらの決定に直接投票したり、意見を形成する教育を受けたより専門的な知識を持つ人々に自分の議決権を委任できたりします。

<図:翻訳元参照>

この図の詳細な説明ですが、一見多少複雑に見えるかもしれません。 それでは、政府関連の図を説明しましょう、政党の図によく似ています。合計で6人の有権者がおり、そのうち3人が委任責任を持ちます。前にも述べた通り、問題は3種類(従って、専門知識が3分野)あります。: 財政政策、金融政策、環境・気候政策。

ご覧のように、6人の有権者はほぼなんらかの形で、すべての問題に独立な投票者(真の専門家でなければなりません)となる頂点の委任者を除いて、自らの投票を委譲しています。投票者Bはとても忙しく、無関心か特定のトピックに関する十分な知識を持っていないか、またはその両方のため、すべてを委任しています。

全体的に、緩やかな民主主義は直接/議会制民主主義に比べてほんの少しだけ複雑です。しかし提供する利点は、初期学習障壁をはるかに上回ります。それでは、利点の詳細に触れてみましょう。

緩やかな民主主義: なぜか?

さて、今日の民主主義の問題についてより良く、またどのように緩やかな民主主義が動作するか概要を理解しているので、大きな「なぜ?」について詳細に入ることができます。最も重要なことは、緩やかな民主主義が現状よりはるかに優れた解決策だとしても、硬直した場合(訳注:solid case)を提供する必要があることです。願わくは、緩やかな民主主義の直接/議会制民主主義を超える利点である最大の特徴リストでこれを達成したいです。

緩やかな民主主義は本当に民主的です。 有権者には個人的にや誰か他の人に委任しるか選ぶ選択肢があります。これは、ユーザーは常に自分自身に投票を限定されたり、数年に一度の投票するといった今日利用されている民主主義とは全く対照的です。これら2つのモデルでは、有権者は参加するために必要とされる作業の種類に圧倒されたり、政府の意思決定に十分含まれていなくて本当にがっかりしたりします。緩やかな民主主義では、有権者にいつでも変更できるよう関与する裁量の自由を与えます。これは、国の意思決定が全人口の手の中に直接あることを意味します。

緩やかな民主主義は低い参入障壁があります。 委任者になる最低限の要件は、他の人の信頼です。ほとんどの人は喜んでこの責任を引き受け、委任者になれます。 如何なる政党も有権者に勝つ必要がありません。 有権者を意図的に騙すような法外なマーケティングキャンペーンの代わりに、主題についての人が持つ能力や知識だけが委譲者を通して集計されます。アイデアやコメントや議論の集合を含んだ全体的な意思決定プロセスのできるだけ低い参入障壁を作ることで、はるかに鮮やかなアイデアや視点の多様性で満たされるでしょう。これを通じて、意思決定の結果は、はるかに大きな人口の大部分を満足させ、国の全体的なより良い統治につながります。

緩やかな民主主義は競争する代わりに協力します。 代表的な民主主義国では、こんにち、政治レースの競争で、豪華で不要なキャンペーンの支出に支配され、有権者を通して勝つための政治的な競合や意図的な嘘や暴露をするでしょう。多くの場合、大多数の候補者は政治運動を作り上げるより競争に勝つためにより多くの努力をし、実際問題の代わりに想定された政治問題に焦点を当て、「どのように?」として国をリードします。もし実際の国の統治よりも有権者があなたに投票することを重要だと確認することがあれば、全身傷だらけだと保証できます。 勝ってすべてを得るか、負けてすべて失うか、これがこんにちの民主主義のモットーです。緩やかな民主主義では、代表になる競争は別に設定されています。その代わり、委任者は単に継続的な努力と自身の能力の証明によって有権者から得た信頼に基づいて競争します。有権者は(少なくとも長期的には)騙されることは無く、人の良さ、意欲、そして国を改善する能力がすべてです。

緩やかな民主主義は責任を生みます。 委任者は信頼の印です。もしこの信頼が崩れた場合、有権者はすぐに自分のために別の委任者を発見したり自身での投票を行ったりできます。この仮の信頼により、委任者はいつでも委任投票権を失う可能性があるため、責任感と説明責任を生むことになります。このように、委任者は利己的な欲望の代わりにコミュニティの賛成投票を喜び正直に行動する多くの可能性があります。

緩やかな民主主義はマイノリティーの直接代理権を意味します。 低い参入障壁があるので、マイノリティーは政府内ではるかに容易に表現できます。これは、特定の民族や人種から出た代表の最小の要求を実装する必要があるような余分な法律が無いことを意味します。 その代わり、緩やかな民主主義は、国の意思決定と統治について意見のあるマイノリティーや任意サイズの民族グループのための社会構造の直接表現です。

緩やかな民主主義はより良い意思決定につながります。 B十分な情報を作る専門家のネットワークへと進化することで、ドメイン固有の決定、穏やかな民主主義は全体的により良い意思決定につながります。穏やかな民主主義は結局のところ、最も熟練した能力主義に進化し、知識と経験豊富な有権者はそれぞれの専門領域で意思決定を行うことになります。

緩やかな民主主義はスケーラブルです。こんにちの時間感覚では、国家の統治に関する問題を常に更新するには人々はあまりにも忙しいです。行う必要のある決定は増え続け、政府のための意思決定に、貴重で評価の高い時間の多くを単に消費する必要はありません。 加えて、私たちは専門家集団であり、非常に少数の異なるドメインをよく知っています。このため、委任者を通して、国家の全体的な統治をより良くするために自分の時間と知識を捧げる博識の専門家に意思決定を任せられます。

穏やかな民主主義の現在の状態

穏やかな民主主義が実際に使われていない主な理由は、ここ10年間での実装障壁によるものです。穏やかな民主主義は直接民主主義と同じで、参加者のために常に委任投票を配信できる基盤となる技術的なインフラストラクチャを必要とします。インターネットと暗号技術の発展を通じてのみ、過去数十年可能でした。(訳注:よくわからない Only through the Internet and advances in cryptography has this been possible during the last few decades.)

技術的な障壁を離れて、次に大きな障害となるのは、教育のみです。この調査が示しているように: http://publicvotes.org/vote/ec94wL7Sw37iZtRwf  ほんの少しの数であっても緩やかな民主主義について聞いたことがあります。したがって、大規模なコミュニティで緩やかな民主主義を本当に実現するには、 利点と新しい民主的な可能性について市民により多くの努力して教育する必要が有ります。そのための唯一の真の解決策は、コミュニティの内外の人に、緩やかな民主主義が何を意味し、提供する利点は何であるかという興味深いユースケースを作成することです。

特定の意思決定やさらには選挙のために LiquidFeedback (http://liquidfeedback.org/) のようなソフトウェアを使ったPirate Parties across Europe によって多大な努力が行われています。 これとは別に、 Google が緩やかな民主主義の内部実験とその結果を最近発表しました(http://www.tdcommons.org/cgi/viewcontent.cgi?article=1092&context=dpubs_series) 。 私たちはこの領域のより多くの進展を見ることになり、緩やかな民主主義は率先して新しい場所を確保するでしょう。 Bryan Ford (http://www.brynosaurus.com/deleg/) は、緩やかな民主主義について素晴らしい仕事をたくさん公開しているので、すべてチェックアウトすることをお勧めします。

個人的な仕事として、新しいユースケースを作り既存のちょっとした投票システムと協力してEthereum 上に緩やかな民主主義の実装を実現させるつもりです。

結論

緩やかな民主主義は、こんにちの社会のための民主主義モデルに適合します。この技術の準備はできており、唯一不足しているのは、より詳細にこの分野を研究し、具体的な実装に取り組むより多くの努力です。最も重要なことは、国の実際の統治(階層型や管理型)に適用可能なモデルを決定する必要があることです。

質問の多くは今後数年間にわたって、私やたの人たちが答えていくことになると確信しています。誰か知りませんか、10年か20年実際にやってみようという小さな市や単なる村を?これは確かに可能です。

参照

[1] http://homepage.cs.uiowa.edu/~jones/voting/pictures/

[2] http://www.civicyouth.org/2014-youth-turnout-and-youth-registration-rates-lowest-ever-recorded-changes-essential-in-2016/

3 件のコメント:

  1. Our democracy no longer represents the people. Here's how we fix it | Larry Lessig | TEDxMidAtlantic
    https://www.youtube.com/watch?v=PJy8vTu66tE

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  2. From the Old Boys Club to Liquid Democracy: A Call for Mass Participation
    https://www.youtube.com/watch?v=VDWLxZgpGsU

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  3. Liquid Democracy - Decision Making for the 21st century
    https://www.youtube.com/watch?v=-YXoPfCeU6o

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